jeudi 20 mars 2008

時々思い出す昔のこと(3)

 これから、しばらくの間寝泊りする部屋を空けると・・・・・・そこには、簡素な机と椅子、そしてこれまた簡素なベッドが一つ。テレビなんかで見る刑務所のそれなんかに比べればいいほうだけど、ほんとに何もない。何だかいいがたい感情に襲われたのを覚えている。言葉には出来ない感じ。

 部屋の大きさは15㎡だったかな。大きくは無いけど、一人には十分。大きな窓が一つ付いていたけど、これがうち開きで、大きく開けると邪魔でしょうがなかった。フランスはほとんどのドアがうち開き。セキュリティの問題だって聞いたこともある。誰かが侵入しようとしたとしてもドアを押し閉めることが出来たほうが、力が入りやすいからね。本当のところはどうなんだろう?

 そして部屋の隅にはウォークインって言うとかっこいいけど、クローゼット。

 その後簡単に荷物を片付けて、とりあえずの水やら、食料を近所の検索がてらに調達に行く。そこでわかったことが、ここら辺は色々便利なところだということ。すぐ近くにはいくつかのスーパー、パン屋、ワイン屋(大事です)、やおや、カフェなどなど・・・生活するのに、非常にいいところであった。

 そのとき何を買ったなんて覚えていないなぁ。妻に聞いてみたけど、記憶に無いとのこと。そうだよね、お互いにいっぱいいっぱいだったからね。その後、最寄のカフェで二人で食事をした。ここでも一緒、何を食べたか覚えていない。たぶんステックフリッツなんかだったと思うけど・・・たぶん僕の頭の中はその日の夜の飛行機で帰国する妻を、きちんと空港に送り届けることが出来るのかということでいっぱいだった気がする。

 その後、部屋に戻り妻の荷物の整理を手伝って、タクシーを捜しに外に出る。すぐに見つかったけど、行き先がなかなか伝わらなかった。まぁ、最初のころはよくあったことで、航空チケットを見せたりなんかしてしのいだ気がする。運転手は初老のフランス人女性。運転中彼女に頻繁に話しかけられたのをよく覚えている。まったくもってフランス語がわからない日本人に話しかけて来るこの人はなんだろうと思いながら、適当にあいづちと微笑で、コミュニケーションをとる(取れてないけど)。

 かなり渋滞していたけど、何とか間に合うようにシャルル・ド・ゴールに着く。さっきとった食事がちょっと早めの時間だったことも合って、二人とも空腹だった。そこで、空港の中に入っているカフェで軽い食事を取る。それ以降、僕たちが日本に一時帰国するときにはそこでお茶をしてから飛行機に搭乗することにしている。なんとなく縁起かつぎみたいなもので。

 そして、出発の時間が近づいてくる。そのときの心境と言ったら・・・それまでの人生の中では味わったこと無いもの。言葉にすれば、別れのつらさとなってしまうけどそれだけでは伝わりようの無いものだった。最初の一年間は何も気にすることなく、僕がやらなくてはいけないことに専念できるようにと思い、自分で決めたこと。それに滞在費とかのことも含め、確実な収入が見込めない二人が一緒ということはその後の展開しだいでは、かなり厳しくなってしまうし。

 妻も寂しかった思うし、その後一年間よく我慢してくれたと思う。でも、あの時僕がストイックに働くことが出来たのは、日本で待つ妻を早くこっちに呼べるようにと思っていたから。人間基本的に怠け者だから、ほんとに独り身だったら今の状況は無かったかもと思うこともある。感謝しています。

 そして、出国ゲートを通って飛行機の登場ゲートに向かいながら次第に小さく見えなくなっていく妻。何度か手を振り合い、見えなくなったところで、僕はタクシー乗り場に向かった。このとき、この空港の大きさが、そのときの僕になんともいえない空虚な感じを与えた。

 その思いはタクシーの中でも・・・なんとも言いがたい気持ちになりながら帰路に着いた。

 そして、その日の夜から、僕のフランスでの挑戦が始まったのでした。




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